
「うちの子、虫のことばかりで大丈夫でしょうか?」
療育の現場で、保護者の方からよく聞く言葉です。
図鑑を何度も開き、
同じ種類の昆虫の話を繰り返し、
公園に行けば地面ばかり見ている。
一見すると“偏り”に見えるその姿は、
実は発達の大切な土台を育てている可能性があります。
■ 「好き」は脳を動かす
人は「やらされていること」よりも、
「やりたいこと」をしているときのほうが、脳の活動が活発になります。
特に関係しているのは、報酬系と呼ばれる仕組みです。
好きなことに取り組むと、ドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。
ドーパミンは、
・集中力を高める
・記憶を定着させる
・「もう一度やりたい」という意欲を生む
といった働きがあります。
つまり――
好きな活動は、学びの準備体操のような役割を果たしているのです。
■ 過集中は“困り”だけではない
「何時間も虫を見ていて、切り替えができないんです」
それもよくある相談です。
もちろん、生活のリズムを整えることは大切です。
けれど、過集中の背景には
・高い持続性
・探究心
・情報を集め続ける力
が隠れています。
療育では、その“困り”の部分だけを見るのではなく、
そこにある力をどう伸ばすかを考えます。
例えば――
「あと5分で終わりだよ」と事前に伝える。
タイマーを一緒に見る。
好きな活動のあとに楽しい予定をつなげる。
好きは奪うものではなく、
広げていくものです。
■ 好きから社会性は育つ
虫が好きな子が、ある日こう言いました。
「これ、先生にも見せたい」
その瞬間、好きは“共有”に変わります。
・伝えたい
・聞いてほしい
・一緒に見たい
そこから言葉が増え、やりとりが生まれます。
社会性は、無理に教え込むものではなく、
好きの延長線上に自然と芽生えることもあるのです。
子どもが夢中になっている姿は、
実は、未来へ伸びている芽かもしれません。
焦らなくて大丈夫。
その“好き”は、ちゃんと育つ力を持っています。


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